2011年岩戸寺修正鬼会

2011年2月6日

2009年の岩戸寺修正鬼会の取材は、最後の鎮鬼、鬼後呪を待たずに終えた。どうしてもそれを見るべきと、今年は、夜中に起きてそれを見に来た。

夜の勤行が始まって9時間あまりが過ぎようとしている。いつもなら真っ暗な闇の中にひっそりと静まり返っている岩戸寺地区だが、今夜は、どの家も明々と灯をともしている。この鬼会の行事がこの地域一体となった行事であることを表している。

今頃、鬼はどこの家に上がり込んで厄払いをしているのだろうか。都会へ出ている大勢の家族が今日の為に集っているだろうか。

暗闇の参道に車を停めて耳を澄ますと、「オーニハヨ-、ライショハヨー、・・」の掛け声が遠くから微かに聞こえてくる。

私が岩戸寺に到着したのは午前2時30だった。明かりの灯る岩戸寺へ向かって坂を上って行くと、暗闇の遠くから「オーニハヨー、ライショハヨー、・・・」の声が寺に近づいて来る。その声に応えるように岩戸寺方向から法螺の音が鳴り響き始めた。
急いで寺の本堂へ向かう。

私が寺の境内へ着くと数人の介添え役他がたき火にあたっていた。「そろそろ戻って来る頃ですか?」と、誰と無く問いかけると、「もうじきじゃな」とたき火の火の向こうから答えてくれた。

私は、寺の横を少し上ったところにある講堂へ向かった。
講堂前で東光寺の住職が法螺を吹いている。行入寺の修道副住職の姿も見える。夜一昨年の夜の勤行の賑やかさは無く、行事関係の僧侶とお囃子と数名のカメラマン他で観客は私ぐらいだった。

すぐに、鬼が介添えを従えて石段を上ってきた。だいぶ疲れた様子で這い上がって来る。鬼と介添えは、講堂を通り過ぎて、その上にある奥の院へ参拝に行き、しばらくして講堂へ下ってきた。


今年は、両子寺の寺田豪淳副住職が鬼鎮、鬼後呪の鬼役を務めていた。

鬼は、講堂へ這い上がり、走りタイ(小さな松明)を振り回して大暴れを始めた。これを介添え役と僧侶が押さえ込んで、鬼の面を外し、院頭の岩戸寺住職が、鬼の口へ鎮めの餅をくわえさせる。鬼は静かになり、元の僧侶へと戻る。

最後の大暴れで今日の大役を果たした鬼は、講堂の薬師如来座像に無事の終了を報告し、院頭他僧侶たちによる鬼後呪の儀式によってすべてが終了した。

この間、笛と鉦と太鼓によるお囃子が厳かな雰囲気を講堂に作り出す。


鬼は、膝まづき、静かに頭を垂れ、無事の勤めを薬師如来他仏や神神に感謝した。
その後、疲れきった鬼役の両子寺副住職は介添えに支えられて、寺へと下って行った。

大役を務め終えた安堵の表情は軟らかく優しく、仏に見間違う表情を見せていた。

私を見捉えてお声掛けいただいた。ねぎらいの言葉をおかけし、握手をしていただいた。冷たく冷えた私の手が、一瞬に暖かいエネルギーをいただいた。

寺の本堂の縁に腰掛けて草鞋をはずし終えるのを見届けて、岩戸寺を後にした。

皆様、お疲れ様でした。



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